スリル・ミーを見てきた
実はフォロワーにお勧めされたので見に行っていた。生の劇を久しぶりに見に行ったのですがいい体験だった…。
以下は書きなぐっただけの感想群。
忘備録を兼ねているためネタバレあり。
もとはラインにぽんぽん投げたものなので話がばらばらなのはご了承ください。
あとで丁寧に書き直すかもしれないけどやらないかもしれない。少なくとも文字数は無限に増える。
せめて時系列に丁寧に並べるべきかと思うけれど読むのは自分くらいなのでいいかなと…。そういったものになります。
スリル・ミーの感想第一声はたいへん…だった。
あれはたいへんが先に出てくるのも仕方がないのではないだろうか。
舞台沼フォロワーからのおすすめだったのだけれど、そのフォロワーから事前情報抜きで行ってみとのことだったのでその通りにしてみた。
そこで目にしたものは男×男の巨大な感情が殴り愛をしている事前と事後のある破滅までの物語だった。いやーたいへん…大変としか言いようがないのでは?
感情の行き場に困ったのですが。
見直そうにも戯曲も円盤もない…!?今回のCDもおそらく出ない…!?
ということを後から知ったのでそのぐらいは調べてもよかったかもしれなかった。記憶する気合度が違っていた。
とりあえずCDは確保して聞きながらこれを書いている。
舞台は一期一会の生ものなのだなといくつかの観劇に行って実感している。その日に見たものはその日にしか存在せず、思ったことも感情もアーカイブを見たとしても完全には蘇らない。
完璧な記憶力があればと苦しみを覚えるつらい。
それはそれとして、海外の原作「Thrill me」には戯曲が存在しており、入手することは可能であり楽譜もついていることを確認したのでそのうち手に入れたい。
シナリオを確認しようと思ったら英語を読む必要がある…フランケンシュタインでも同じようなことをしている…まだ読めてないのですが。いい加減に読みたい。
見たのは松岡×山崎コンビの舞台だった。
印象はフランケンシュタイン(NTLive)とリーマン・トリロジー(NTLive)と駆け込み訴えを足して割って、そこにBLをかけて日本の味付けをしサスペンスにパラメータを全振りしたような内容だった。つまりめちゃくちゃ濃い。
舞台はシンプルで必要最低限のものだけがある。
真ん中には少し高さのある段がせりあがっている。奥には階段があり少し高い位置にも舞台が続いている。手すりは用意されているが工場のような無機質さを感じた。右上にはピアノが設置してありそこで劇伴が演奏される。
左右には長椅子があるが、装飾はほとんどなく打ちっぱなしのコンクリートのような冷たさを感じた。
舞台上の高低差を利用した演出が各所にあり、舞台のあらゆる箇所が効果的に使われていたように思う。
舞台を書き起こす語彙がなくて絶望では?続けます。
観劇後にフォロワーに、
「抱きしめてくれ」と彼に迫り、そのあとの気だるげな雰囲気が完全に事後だった点について気のせいかと問いたら、
気のせいじゃないと言われて大変さの度合いが無限にあがった。
完全にすけべの後の雰囲気であったし、いいんですか…!?そんなことして…!?と動揺していた。
この事後事件の前に彼が私にキスをしてこれが欲しいんだろう?と私の気持ちを弄ぶシーンがあったのですがこの時点でえっ…!?この作品ってそうゆう…!?という動揺をしていたんですよ。初見だったからびっくりしてしまった。(ただし席は遠かったので表情とかまでは見ることができなかった)
100分間の歌あり絶叫ありの二人きりの劇で声も枯れず張りを保ったまま一切ミスすることなく完遂して本当にとんでもない舞台だった…。
二人の関係は愛による支配と駆け引きだった。
慈しみあう愛ではなく、激しく求めて破滅に向かうタイプの愛。
相手を自分のものにしてすべてを思い通りにするための愛。
相手を手に入れられるのならばすべて失ったってかまわない、その過程で私はスリルを得ることができる。
彼は私を支配下に置き自分の言うことに従うように、そして私が従うことに喜びを覚えていた。
彼は与えるものとしての立場に固執し、与えられるものから与えられることは拒絶する。
ただ現在の私は無辜の少年の命を奪ったことに対し後悔をしている。
冒頭の彼に再び出会った私が支配的な態度の彼に惹かれる姿が甘美で退廃的な雰囲気を感じる。
ピアノの劇伴が作中の雰囲気を壊さずにその場の空気をまとめているのがとてもよかった。緊張感のある演奏で鋭さもある。
彼の印象としては、自分の賢さに自信を持っているものの繊細で自分は愛されていないという不安定な自我に無理やりニーチェの超人であるという属性を当てはめているように見えた。
私はそんな不安定な彼の危うさに心酔している、支配もそのあとの彼の報酬を思えば甘美であると従っている。
彼の傲慢さや不安定な弱い部分も全て欲しいが、私は彼からの優しさを求めているわけではないという…支配権を奪い合うパワーゲームだった。
彼と再会したあとの最初の犯罪である放火のシーンは非常に耽美だった。
ここで二人は取り返しのつかない道を選んでしまったことがわかる。
私は以前と違う成長したのだというシーンで彼に触れてみてくれというが、彼は触ってくださいとお願いしろという。ここで私がしぶしぶと不服そうに彼に触ってくださいとお願いするところで二人のパワーバランスを垣間見ることができてよかった。
彼はお前を支配したいという感情が前面にでており、私は彼にただ支配されるままであることには不満がある。けれど彼から支配を受けること自体には快楽を覚えているよう見えた。
火をつけた次の日に彼のもとへ向かい、不安を彼にぶちまける。支配されるだけの関係は一方的で彼を自分のもとにとどめておくことはできない。彼は自分たちは特別な超人なのだというけれど、私はそれだけでは満足しない。
私は彼に見返りを求めるが、それならば契約をしようと彼は持ちかける。
お互いの要求を叶えて報酬を与え合う関係で対等であるとしようという。これを彼のほうから持ち掛けてきたあたりに彼の自信と傲慢さが垣間見えている。
契約書に血のサインをする時も相手の指は自分で切るが、私には自分の指を切らせない所に、自分は与える側で与えられる側ではない選択権は自分にあるのだという感情が見える。相手を自分の意のままにコントロールしたいのだろう。
与える/受け取る、支配する/支配される、奉仕する/奉仕される、の関係を見たときに最初に思ったのはSMの関係か?だった。自分は与える側なので与えられることを拒否する。
CDと舞台を比べると、私はかなり頑固で我が強い。しすて狂気的で妄信的の度合いが強かったように思う。本気で自分がこの世で一番の理解者であり彼の求めることを与えられると信じ込んでいる。そして彼を求めることに全くためらいがなく声の圧が強くてガンガンぶち当たっていくイメージ。
このコンビはお互いにお互いを支配したいという意思が前に出ている。
彼は繊細さとヒステリックな部分や激情家な部分が強くこちらも非常に圧が強かった。
思い込みはかなり強く、自分が超人であるという自認と現実との扱いの違いによる摩擦で苦しんでいるように見えた。
子供を誘拐するシーンの猫なで声の話しかけ方や興味の引きかたが本当に誘惑し連れていく手法で最悪!!!!!と叫びそうになった。
真っ暗にした舞台で階段を挟んでふたつの丸い照明をつけることで車のライトを表現しているのはとてもよかった。手袋をはめてから子供の手を取るのがとても恐ろしい暗喩のようにみえた。
歌に関してはなんでそんなに長いロングトーンが出せるの?肺が五個あるの?とびびっていた。どうしてそんな安定して長く歌えるんだ…。
CDに収録されていない部分のやり取りも覚えておきたかったけれど覚えている部分
私たちの友情…と話している時に、抱かれて激しく求める関係に対しこれが友情…??と困惑するシーンには私も友情枠で収まらなくないか!?と突っ込みをいれたかった。
現在の私が過去のことを話すときに、あれは五分後のことだった…と言い出した時はずいぶん前のことなのに正確に刻んでるなと思いましたね。
彼と私が子供を殺した後にやった!やってしまった!と舞台の上に転がりでたシーンのピアノと歌の張り詰めた緊迫した空気は生の舞台ならではの緊張感ですごくよかった。
やってることは最悪だけども!
そのあとのラジオで彼らのやったことがどんどん暴かれ追い詰められていくシーンも、私が仕組んだことなのだと理解した後に聞くとひどい茶番に見える。
完璧だというけれど様々なぼろがでて犯人がどんどん絞られていくのは滑稽で、けれどどれだけ滑稽でも子供を殺したという事実は重くのしかかっていく。
彼は私を見捨て、一人だけ助かろうとするがもちろん私はそんなことを許すことはなく二人とも留置される。
裁判が次の日に迫るが彼は自分たちは死刑の判決を受けるだろう、それはきっと避けられないのだと自覚する。人を殺した事実が彼の超人という虚飾をすべてはぎ取って結果を見ろと見せつけている。
彼が死にたくないと一人独房で狂っているのを、私はどんな気持ちで聞いていたのか。自分の手のひらで彼が苦しんでいるのを笑っていたのだろうか?彼だけでなく私も破滅するのだけれど彼を手に入れられるのならばそれでいいという狂気よ…。
人を殺した罪を裁くために人を殺すのか?という弁護で彼と私の死刑を退け99年の懲役に変えた弁護人の姿を見て、彼が自分がなりたかったものをその時理解し、けれどもうすべては手遅れというシーンはとてもよかった。
そのあとの九十九年の歌もすごかった…。
彼を支配していたのは私なのだと、これからはずっと一緒なのだと。
死刑になるかもしれなかったのに?君と死ねるなら別にそれでもよかったのだと答えるシーンは狂気的で私の狂いがみれた。たいへんだよほんと。
けれどそんな風に彼を求め手に入れたというのに彼はほかの囚人の手であっさり殺されてしまい、私もそれを深く掘り下げずただ死んだと審議員につたえている。
フォロワーは私の勝利を彼が壊すために死んだのではと言っており、最高だなと思いましたね…私はまだ結論が出ないというよりはどう判断したらいいのかわからない。
ただ私は釈放された後に最後に彼と出会った森(公園?)に再び向かい、彼のもとへ向かったのは間違いないだろうなと。
そして最後の言葉はスリル・ミーだった。牢獄の中ではスリルを得ることはできなかったのかもしれない、そんな私は死というスリルを最後に得たのだろうか。
まだ書ききれていない部分があるけれど話のこまごました内容はこのような感じであったように思う。
青年二人がスリルを求めて破滅していく、退廃的で甘美な物語だった。
松岡さんの過去と現在の演じ分けが非常にわかりやすく、これは今、これは過去とすぐにわかる切り替えがすごかった。疲れてしゃがれた年を取った男性の声と、若々しく情熱的で妄信的な青年の声で全然違っていた。この公演のCDがでないとか嘘ですよねと言いたくなる。買わせてほしい。
山崎さんの自信たっぷりなくせに繊細でヒステリックに叫ぶ青年の演技もすごくよかった。突発的に自分の感情が抑えられなくて叫ぶ不安定な青年。とてもいい。
二人の声がすごく安定していて全くぶれない芯の通った歌声だったのにこれ買えないんです?本当に?こんなに音程がとりにくい早口寄りの歌なのに全く音を外さないこの演技が買えないのは…つらい…。
舞台の段差を利用してもともとあった二人の慎重さをさらに際立たせる演出は耽美だった。
段の上から彼が私を包み込むように後ろから抱きしめるシーンとか絵面がとても強い。
未熟な青年たちが互いの支配権を奪い合い、スリルを求めて全てを破滅させていく。
危うさに惹かれ魅せられて何もかもを失ったというのに、スリルを与えてくれるものさえ手に入ったのなら全ていいとする。
感想をこねても難しくて全部間違った方向で考えているようで、一回見ただけで理解するのは難しい。
細部ばかりを覚えようとして全体の流れをくむのが下手で、感情を読み取ったりテーマを理解するのがうまくできないので今後はもっとそのあたりをうまくバランスを取りながら観劇できたらなーと思う。
次回の公演が決まったらまた見に行きたい。舞台は舞台で行くのでスリル・ミーは円盤を出してほしいお願いします。